登山には一見問題ないように見えても実は間違っている行為があります。ときには危険につながることもある間違いを集めてみました。なぜそれが間違いなのか、正解はどうするべきなのかも合わせてご紹介します。
食べ残しや汚れた食器を川で洗い流す
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それダメ!
登山中に出た食べ残しやゴミは全て持ち帰ってください。
洗い流すのも結局山に捨てているのと同じことなのでNGです。食べ残しを捨てることで自然に不要な栄養分を与えることになり、生態系のバランスを崩すことになる恐れがあります。
汁などはトイレットペーパーに吸収させるとゴミとして持ち帰りやすくなります。
山の植物を記念に持って帰る
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それダメ!
一見、微笑ましい光景にも見えますが、身も蓋もない言い方をすればただの自然破壊です。
その植物はそこが自分の最適な生活環境なので、見るだけにとどめましょう。
スズメバチから全速力で逃げる
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それダメ!
いきなり全速力で逃げるとスズメバチの習性で追ってきます。
もし出会ったらまず、姿勢を低くします。スズメバチは、下方向への視界が狭いので死角になります。
そしてゆっくり離れることがポイントです。大事なのは刺激を与えないこと。スズメバチは本来おとなしい動物で、初めから臨戦態勢に入っているわけではありません。いきなり全速力で逃げると刺激を与え、かえって攻撃的になります。
同様に手で追い払ったりするようなことも決してしてはいけません。攻撃されているとみなされます。
ただし、明らかにこちらに対して攻撃的な様子だったり、「カチカチ」と音を鳴らしているようなときはもう手遅れです。そのときは全力で逃げます。
山で出会った動物にエサをあげる
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それダメ!
自然の生態系はそのままでバランスを保っています。
思いつきでそのバランスを崩すようなことはやめましょう。
実際にクマ、イノシシ、サルなどが民家を襲う事件などはこれが原因で起こっていることもあります。
クマと出会ったらすぐに全速力で逃げる
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それダメ!
クマは時速60kmものスピードで走れます。スピードでは勝てません。
逃げるには荷物をそっと置き、それに気を取られている間に、ゆっくり後ずさりするように距離を離していきます。
見えなくなったら急いで逃げます。
間違っても荷物を取りに帰ったりしてはいけません。そのニオイを追って追いかけてきます。
ちなみに死んだふりや木登りは意味がありません。
初心者だから仲間の一番後ろから付いていく
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それダメ!
複数人数で登山をする場合は一番ペースの遅い人が先頭になると、みんながムリなく登山できます。一番遅い人が最後尾になると、差が開く一方です。また、差が開いても前の人には遅れている人が視界に入っていないため、どうしてもそれに気づきにくくなります。後ろの人は追いつこうとムリして、さらにキツイ思いをすることになります。
階段がキツイから脇の道を登る
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それダメ!
山道を歩くことで、地面が踏み固められます。それにより、植物が生えなくなったり、地形が変わることで雨水の流れ道になる可能性があり、その流れ先の地形にも影響を与えるおそれがあります。
登山する以上、自然への影響はゼロにはできませんが、それでもできるだけ最小限になるように意識しましょう。
焚き火が終わって火の後始末。熱い炭に水をジャバー
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それダメ!
焚き火直後の炭は非常に高温で、直接水をかけるのは大変危険です。
かけた水は一瞬で高温の水蒸気になり、近くの人を火傷させる恐れがあります。また、同時に灰も舞い上がり吸い込む危険があります。
炭はバケツに汲んだ水に一個ずつトングで漬け込むか、火消し壷を使いましょう。
また、消化した炭は乾燥させることで再利用できます。
レインウェアが痛むから洗濯しない
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それダメ!
使ったレインウェアは洗濯しましょう。レインウェアは防水・透湿機能が付加されていますが、汚れたままにしておくことでこの機能が低下します。
洗濯すると確かに劣化しますが、その度合は非常に僅かです。最近レインウェアは数千回の洗濯に耐えるように作られているものが多いです。
少なくとも洗濯による劣化を感じる前に登山中の動きやザックとの摩擦やその他の要因での劣化のほうが圧倒的に上なので気にしたところであまり意味はありません。
スズメバチに刺された!口で毒を吸い出す
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それダメ!
虫歯があったり、口の中に傷がある場合、そこから毒が入り、全身にまわってしまいます。
あらかじめ毒を吸引する器具を持っていることが望ましいですが、もしない場合は、指でつまんで絞り出し、流水でよく洗い流しましょう。
また、針が傷口に残っていると、どんどん毒が送り込まれてしまいます。刺されたときはまず針が残っていないか確認するようにしましょう。
溺れたらもがくのではなく、じっと浮かんだまま助けを待つ
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それマル!
とにかく体力を温存する方法を考えることが大事です。
もがいても体力を消耗するばかりでなく、余計に沈むことにもなりかねません。
まずは気を落ち着けて仰向けになりましょう。
呼吸をすれば体内に空気が入りますので、浮袋と同じで勝手に水面に浮かび上がります。
その状態で助けを待ちましょう。
川で泳いでいると溺れている人が!急いで「つかまれ!」と手を差し出す
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それダメ!
泳いでいるときは自分を固定させるものがないため、非常に不安定です。
人を助けようとしても巻き込まれて二重に溺れないためにも、まずは自分の安全を確保するのが先決です。
雪崩に巻き込まれた。大声で助けを呼ぶ
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それダメ!
雪崩に巻き込まれたときは1病でも自分の体力を温存させることに集中しましょう。
大声で叫ぶことは体力をムダに消耗します。
また、その声が届く可能性は非常に少ないです。
もし雪崩に巻き込まれたら口の周りを手で覆って空気を確保する
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それマル!
雪崩後の死因はなんだと思いますか?
冷たさで死ぬ、つまり「低体温症」かと思いきや、実は「窒息」が94.5%を占めます。(低体温症は1%)
雪崩に巻き込まれたら、呼吸をするための空気を確保することが最優先。
口の周りを手で覆って空気のスペースを作りましょう。
登山者に危険が!かける言葉は「危ない」ではなく「逃げろ」
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それダメ!
「危ない」と言われても何をすればいいのかとっさに判断がつかず、危険を回避するどころかその場で固まってしまう可能性もあり、余計に危険です。
言われた方が考えずに即行動に移せる言葉は「逃げろ」です。
登山してると沢の水発見!透き通ってておいしそう!
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それダメ!
自然そのままの水、と聞くといかにも無害のように思いがちですが、その水の元は雨水で、上空数百メートルから降って地面の中に吸収されて沢へ流れた水です。
雨を貯めたコップの水、そのまま飲めますか?
地面に溜まった水、そのまま飲めますか?
沢の水には人や動物の糞尿が混ざっている可能性があります。上流で動物の死骸が浸かっているかもしれません。
生水には目に見えない微生物が生息しています。
それはまさに自然そのままですが、普段、しっかり消毒された無菌状態の水ばかり飲んでいる私たちには充分毒になりうるのです。
山で迷ったらとにかく下って人里を目指す
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それダメ!
1つの頂上からいくつも枝分かれしたルートがあるように、裾野に行くほど複雑になります。迷った状況で下ると、どんどんあらぬ方向に行く恐れがあります。
登ることで山頂に向けて道が絞り込まれ、やがて尾根に出る可能性が高くなります。
尾根に出て安全な登山道に戻れたらそこから下山しましょう。
分かれ道。踏み跡があるからこっちだ
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それダメ!
その踏み跡は「間違えた跡」かもしれません。
同様に、テープがついているほうを正解と見るのも危険です。道案内としてつけられている場合が多いですが、林業の作業用につけられているだけの場合もあります。
その可能性を考えずに「どう考えても左だと思うけど、テープが右についているから右に行こう」という判断は危険です。
判断に迷う前から地図、コンパスを確認する習慣をつけ、テープや踏み跡は補助的なものに留めるべきです。
動きやすいし汚れても気にならないからジーンズで登山
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それダメ!
動きやすいイメージがあるジーンズですが、伸縮性に乏しく、大きな動作のある登山には不向きです。
また、濡れたあとに乾きにくいのも問題です。汗や雨や川の水で服が濡れたままの服を着続けることは体力のムダな消耗につながります。
登山用のパンツを用意するのが難しければジャージなどがいいでしょう。
肌触りがいいから綿100%のTシャツで登山
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それダメ!
綿100%の衣類は吸水性は抜群ですが、速乾性に劣ります。
汗をかいて吸収はしてもそのあとずっと濡れたままになりやすいのです。
濡れたままの服を着続けることは体力のムダな消耗につながります。
スポーツ用の化繊(ポリエステル等)のTシャツがおすすめですが、綿100%が良ければこまめに着替えられるように予備をもっていきましょう。
バテたから仲間の一番うしろからついていこう
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それダメ!
複数人数で登山をする場合は一番ペースの遅い人が先頭になると、みんながムリなく登山できるのでオススメです。一番遅い人が最後尾になると、差が開く一方です。また、差が開いても前の人には遅れている人が視界に入っていないため、どうしてもそれに気づきにくくなります。後ろの人は追いつこうとムリして、さらにキツイ思いをすることになります。
降水確率0%でとっても天気いいからカッパ持っていかない
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それダメ!
山は遠い・近い、高い・低いに関わらず、常に遭難と隣合わせのリスクがあります。
遭難して山の中で夜を越すとき、カッパは防寒具として有効です。
また、山の天気は変わりやすく、地上の天気予報は参考になりません。
薪がない!木を切って焚き火
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それダメ!
薪に限らず、山の植生を傷つけることは基本的にNGです。
山の中なら意識して30分も歩けば大体見つかります。見つからないならあきらめましょう。
そもそも生木は水分を含んでいるのでくすぶるばかりで燃えません。
山道ですれ違うときは下りの人が谷側で待つ
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それダメ!
登り(下にいる人間)優先が原則です。
理由として、登り側より下り側の方が転倒、滑落の危険が大きいこと、上の人間が落石を起こすと下の人間に被害が及ぶ可能性があることなどが挙げられます。
また、待つ側は谷側ではなく山側で待ちます。谷側で待つと、すれ違うときにぶつかったりすると、谷に落ちる危険があります。 ただしあくまで「原則」であり、状況に応じて臨機応変に対応することが最も大事であり、あまりに原則に縛られすぎるとそれはそれで危険なので注意しましょう。
ナタで薪割り。斧のように大きく振りかぶってーーー
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それダメ!
ナタは振りかぶって勢いよく振り下ろすと非常に危険です。
薪割りをするときは薪にナタを当て、ナタの上から別の丸太などで少したたくことで薪に刃を打ち込み、その状態で薪ごとナタを10cmほど持ち上げ、地面に打ち付けて少しずつ裂くように割ります。
また、打ち付けるときにナタを持っていない方の手は手首まで覆える皮の手袋をして、刃を振り下ろす先に置かないようにします。
登山のハットは防水対応にすると簡易傘がわり
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それマル!
登山中に雨が降ったときはレインウェア(雨合羽)を着るのが基本ですが、霧雨のような、降っているというほどでもないような弱い雨や、一瞬だけ降るようなのがときどきあるようなレベルだと、その度に脱ぎ着するのは現実的ではありません。
ハットが防水対応だとそのくらいの弱い雨はそれだけでしのぐことができます。
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