©MSR
登山でお湯を沸かすとき、料理するときの方法にはいろいろあります。
その場で薪を調達して焚き火で、無音でゆらゆらと燃え続け、ムダのないミニマムな佇まいが男心をくすぐるアルコールストーブで、準備、片付け、収納など全体的に効率的なシングルバーナーなど。
最もメジャーなのはシングルバーナーで、燃料にはガス缶を使うのが一番メジャーですが、パワーに限界があり、パーティーで登山やキャンプをする場合など大人数の料理を一度に作るのはなかなか厳しいものがあります。
そんなときはMSRのドラゴンフライ。
これもシングルバーナーのひとつですが、その燃料はなんとガソリン。
圧倒的なパワーを誇ります。
1リットルの水なら5分で沸かせます。
論理的に考えるとデメリットの方が多い…でも
ただ、正直言ってデメリットの方が多いです。
着火までのポンピング、プレヒートという儀式…燃焼している間の轟音…火力調整がしにくい…すすが詰まらないように使ったあとはノズル掃除…持ち運ぶときはガソリンのニオイがザックや食材などに移らないように配慮が必要…など。
ガス缶のシングルバーナーならライターで一瞬で着火できますし、火力調整はつまみで自由自在、掃除なんて基本的に不要だし、ニオイゼロだからしまうときも何も気にしなくていいです。ガソリンみたいに液体じゃないからこぼれる心配もないし。
そのガマンの代替が強い火力と言われても、「え、それだけのためにそんないろいろがんばらないといけないの?」と言いたくなる人は多いと思います。
でもロマンがある!
と、いきなり冒頭でネガティブなことばかりグチってしまいましたが、そんなのは受け止めた上でこれを使いたいんです!
一言で言えばこれは男のロマンです!
このガソリンの赤いボトルに黒のMSRロゴ、この無骨さめっちゃかっこよくないですか?
いきなり実用性と全く関係ない見た目の話から入ってしまってますが、見た目って大事だと思うんですよね。
キャンプとかって自然の中で自分だけのその日だけの住環境を即興で好きなように作ってそこでくつろぐところに満足があるじゃないですか。
好きなものに囲まれて日常のノイズを全部シャットアウトして過ごす、ある意味「何もない時間」の贅沢さ。
本来、調理さえできればそれで役目は果たすことになるシングルバーナーですが、そこに視覚的な満足を提供する魅力があってもいいと思うんですよ。
その意味では焚き火もそれに通じるものがあります。
焚き火の炎のゆらぎとかパチパチなる音とかガスには出せないあの温かい色とか、見てるだけですごくゆったりした贅沢な時間が過ごせるんですよね。
焚き火まで行くと何も調理とかしないのにただそれ自体を楽しむために焚き火をしたりしますからね。
MSRのドラゴンフライにはそんな見てるだけで吸い寄せられるような魅力があるんですよ。
この赤いボトルも使っていくうちにヘコんだり傷がついたりしていきます。
が、それがまたかっこいいんですよね。
その傷の分だけ思い出を作ってきたなぁ、みたいな感慨にふけったりして 笑
普通のガスのシングルバーナーだと着火も100円ライターみたいな一番手っ取り早いやつで済ませますが、MSRのドラゴンフライを使うときはムダにZIPPOとか使いたくなったりしますね。ホントに何の意味もないですけどね。気分です気分。
そんなMSRのドラゴンフライではさっき並べたデメリットはもはやデメリットではないわけですよ。
そのいろいろムダに多い手間自体を楽しみたくなってくるわけですよ。
そのあたりを何度もやって慣れて、いつの間にか日常の一コマのように流れるようにできている自分がいたとき、「なんかいい」ってなるわけですよ。
ガソリン以外にも使える
精神論ばかりで、なんか褒めるところがないから苦し紛れに絞り出してるみたいになってきましたね…。
あかん。このままじゃただのネガティブキャンペーンになってしまう。
MSRのドラゴンフライはガソリンバーナーですが、実はガソリン以外も使える「マルチフューエル」なのが大きな特徴です。
一般的にガソリンバーナーにはガソリンの中でも純度の高い「ホワイトガソリン」を使わないといけません。車のガソリンは純度が低く、不純物がバーナー目詰まりの原因になったりします。
ホワイトガソリンは4リットルで2500円ぐらい、1リットルあたり625円。車のガソリンは1リットル130円台ですから、それに比べるとかなり高いですね。
が、MSRのドラゴンフライは車のガソリンはもちろん、灯油でも軽油でも使えるのです。
似たようなガソリンバーナーに比べると本体がかなり高価ですが、それ相応の余裕みたいなものがこういうところに表れてますよね。
でもそれなら一番安い軽油でいいじゃないか、と言う話になってくるわけですが、やはり単純にそうとは言い切れないところがあって、それなりにリスクはあるので、それを理解した上で選ばないといけません。
まず一番安い軽油を使った場合ですが、とりあえず燃焼には問題ありません。でもニオイがかなりキツイです。高度経済成長期の工業都市かよ!って突っ込みたくなるレベルの排気ガス臭がします。
せっかくロマンに浸りたいのにこれは結構ダメですね。まぁこのアイテムを使う人にそんなところでケチる人はいないような気がしますけどね…そこケチるような人は始めからもっと安く効率的なガス缶を使う気がします…。
そして灯油。これはわりと普通に使えます。ただ、専用のノズルに交換する必要があるので、間違えないように気をつける必要があります。
次にレギュラーガソリン。これも基本的に問題ないです。が、ずっとレギュラーばかり使ってるとススが結構詰まってきますので、メンテナンスには少し気をつける必要があります。
ちなみに油ならなんでもいいかというのはさすがに乱暴すぎで、サラダ油とかシンナーなんかを使うと悲惨なことになりますので、やめておいたほうがいいです。
それでも一応火が着くあたり「汎用性高すぎだろ…」ともはや感動を通り越してあきれるレベルですが、とりあえず目詰まりヤバイです。バーナーを分解して掃除しないと使いものにならなくなります。
結構面倒です。
その手間を考えるくらいなら始めから使わないほうがいいです。
燃料の残量が分かりやすい
ガス缶のバーナーで一番困るのは燃料の残量がわかりにくいことじゃないでしょうか。
重さでなんとなくはわかりますが、あるとき急に切れる感じは否めません。
調理途中で切れた場合など「どうするのこれ…」みたいなだいぶ惨めな感じになります。
MSRのドラゴンフライはガソリンで液体なので、ボトルを持てば残量がわかります。
さらにガソリンなので調達が簡単です。
特にバイクでツーリングしている人なんかはそのままバイクから取ればいいので、とりあえず残量におびえる心配はなくなります。
大事な熱源で残量を気にしなくていいというのはなかなかのメリットですね。
燃焼音の大きさ
MSRのドラゴンフライで一番よく聞くデメリットが「音がうるさい」ことです。
が、個人的にはそこまで気にならない感じです。
テントサイトなどで周りに人がいる場合に気を使う必要はあるかもしれませんが、それもテントがくっつくレベルですぐとなりにいるような場合であって、5メートルも離れれば気にはならないんじゃないかなと思うんですけどね~神経質な人は気になるのかな?
でも神経質な人がキャンプするのかな?笑
必ず着火する安心感
ガスのバーナーでもう一つ大きなデメリットがあります。
それは標高が高かったり寒すぎると火が着かない可能性があること。
登山では当たり前の環境なのでこれは結構頻繁に直面することになります。
もちろん寒冷地用のガスはありますが、ちょっと不安は拭いきれないところがあります。
一方、MSRのドラゴンフライはガソリンです。
燃えないわけがありません。
むしろ燃えなくていいときに燃えないように気をつけないといけないぐらいで、燃えないことを気にすることはまずないです。
山の中で必ず頼れる熱源があるというのはそれだけで心強いですね。
パット見で「カッコイイ」と思った人こそオススメ
このアイテムは高価ですが、性能をじっくり吟味して買うタイプのモノではない気がします。
むしろ、「あ、なんかかっこいいから」ぐらいのノリで欲しい人のほうがうまく付き合っていけるんじゃないかなと。
買って使う前までは「これに2万円をつぎこんだのか…」とキャッチバーにつかまされたあとみたいな呆然とした感じを味わうかもしれませんが、使うごとにじわじわと愛着がわいてくる、そんな素敵な男のロマンアイテムだと思います。
あ、ちなみにバーナーにボトルはついていませんので、別に購入してくださいね。