いつもの長い前置き
これまで、登山の思い出はミラーレス一眼のフジフイルム「X-A1」で収めてきたんですが、この前の登山で地面に落としてしまい、ついに壊れてしまったので、新しいデジカメを買わないといけなくなりました。
しかしよくがんばってくれました。
実は落としたのは今回だけじゃなくてもう5回ぐらいは1メートルぐらいの高さから硬い地面やアスファルトに落としてるので、いつ壊れてもおかしくなかったんです。
落下だけじゃなくて、雨の中でもわりと平気で使ったりしてましたからね。
さすがに土砂降りのときはしまってましたけどね。そこまでの振り方になると結露したり像面に雨粒が当たりまくったりで、もはや絵として成立しないレベルになってくるので、撮ろうにも撮れないというハナシなんですが。
デジカメに対する僕のポリシー(なんて偉そうなものでもないですが)として、「カメラはしょせん道具」「撮ってナンボ」というのがあります。
飾って楽しむなんて絶対しないし、傷をつけたくないからしっかり保護するなんてこともしません。
さすがにレンズは傷ついたら困るのでフィルターしてますが、レンズキャップは外に持っていくときは初めから家に置いていきます。
ケースから出すひと手間やレンズキャップを外すひと手間のせいで、撮るのが面倒になったり、一瞬のシャッターチャンスを逃すのがイヤだからです。
デジカメを持ち歩くときはウエストにひっかけて歩きます。
ちょっとでも「あ、」と思ったら即パシャリ。
作品として成立するかどうかは後から考えればいいんです。
腰を据えて構図や露出や画角などをしっかり計算して撮った写真よりそっちのほうが意外と良かったりすることも多いです。
ただ、そんな雑な持ち歩き方は、普段の街歩きならともかく登山でやってるとみるみる傷だらけになっていきます。
ときには木の幹におもいっきりぶつけて「うわ、大丈夫か?w」なんていうこともしばしばですが、気にしません。木だけに。
むしろそれだけ一緒に歩いてきたんだっていう苦労をわかちあった友だちのようで逆に愛着がわきます。
そんなことでこのFUJIFILM X-A1もだいぶボロボロになってしまいました。でも本当にいい写真をたくさん残してくれました。
どこかのブログか何かで「フジフイルムのデジカメは記録より記憶を残す」とかいうことが書いてあったんですが、もうホントその通りだと思いますね。
マニュアル的なスペックは他社に比べて富士フイルムは正直低いほうだと思います。
フジフイルム独自のセンサーは解像感、質感に超えられない壁があるのは今も昔も変わりません。
一言で言うとのっぺりした油絵です。吸い付くような肌の質感や肌の凹凸まで見えるような解像感はありません。等倍で見たときに他社との差は明らかです。
ですが、それはあくまで等倍で見るという論理的な見方をした場合です。
普通に写真を見るときにそんなアラ探しのような見方しませんよね。
で、「普通に」写真を見ると、質感がすごく再現されているように感じたり、解像感が高く感じるんです。
「えっ」と思って等倍で見るとやっぱりチープに見える。でも引いて「普通に」見るとやっぱり凄い写真に見える。
これがFUJIFILMの写真で、個人的に一番驚いたところです。
これを知ってからは理屈で語ることがバカらしくなりましたね。
たまにデジカメの性能比較とかで等倍に切り出した画像を並べて解像感がどうのこうの言っているものがありますが、「で?」って感じですね。
ただ、FUJIFILM X-A1はXシリーズの中でもコスト削減を優先したモデルなので、その富士フイルムが誇るセンサーの技術は省略され、普通のベイヤー配列のセンサーでした。
じゃあ富士フイルムらしさは出ないのかというと全くそんなことはなく、結果的に撮れた写真を見たときにしっかり期待した「フジカラー」を出してくれました。
登山を始めて一気に写真を撮る回数が増え、この2年で2万枚撮ったわけですが、それだけ撮ってきても画質に不満を持つことはなかったので、(後述しますが、性能にかかわらず富士フイルムの特性で共通の良くない部分はあります)次に買うときもメーカーは富士フイルム、モデルはXシリーズ、というところは初めから決まっていました。
ただ、画質には満足していても使い勝手に関してはいろいろ改善したいポイントがありました。
必須1:フォーカス切り替え
もうこれが筆頭ですね。マニュアルフォーカス使いにくすぎです。
メニューボタンかクイックメニューからフォーカスの項目を選んでダイヤルで切り替えなければいけません。
風景ならまだしも動体だったらそんなことしてる間にどっか行きます。確実に。
サブ要員としてオートフォーカスがかなり残念な性能ということもかかわっています。
とにかく遅い、合わせきれない。もういい!自分で合わせる!と、マニュアルフォーカスにしようとしても前述の操作性なので「ふぬーーーーっ!」となるわけですね。
必須2:リモコン
一人で登山しているときは自撮りします。
別にナルシストではないつもりですが、僕は観光ガイドみたいな写真が嫌いで、「今しか撮れない写真、自分にしか撮れない写真」であるユニークさみたいなものを大事にしたいんです。
なので、一人で登山して撮りたい写真があったときは自分もフレームに入れて、そのとき感じたものを表現したりするわけですが、このカメラはリモコンに対応していません。
かろうじてワイヤーレリーズには対応していますが、3000円ぐらいするのと、そもそもワイヤーが写り込む時点で自撮りには使えません。
前使ってたソニーのNEX-5は500円でリモコン買えたので、社外バッテリー並にかんたんに手に入るものと思っていた僕には衝撃でした。
男心をくすぐる「男のオモチャ」
X-T10は(というか富士フイルムのXシリーズ全般がそうなんですが)、かなり思いっきりフイルムカメラの操作系統とデザインを踏襲しています。クラシックカメラのデザインは最近のミラーレス一眼全般のトレンドではありますが、富士フイルムのXシリーズはその中でも頭一つ飛び抜けている印象です。
シャッターボタンにケーブルレリーズ用のネジがリアルに切ってあるデジカメなんて富士フィルムぐらいでしょう。
本当にケーブルレリーズとして使えますからねこれ。X-A1は見た目だけですが。
シルバーとブラックのツートンカラー。軍艦部のメカメカしい感じ。特にシャッター速度の刻みなんかは男ゴコロをくすぐりますね。
飛行機や船の運転席の計器がごちゃごちゃしてる感じは男なら誰でもワクワクしてくると思います。
X-T10はそんなワクワクをくれるカメラです。
ダイヤルを回してシャッター速度を決めて、ダイヤルを回して露出を補正して、絞りもカメラ側じゃなくてレンズ側でカチカチと調節して、設定が決まったらファインダーを覗いてシャッターを切る、これが凄く楽しいです。
僕はフイルムカメラをこういうふうに趣味として使ったことがないのですが、たぶんフイルムカメラ時代の写真の楽しみってこういうところが一つの魅力だったのかなと少し理解できた気がします。ただ撮った結果だけじゃないんですよね。
自分で考えて1つ1つ設定して、それで撮れた結果が期待したものか、期待したものと違うのかそれを確かめるのが楽しいんですよね。
シャッター速度は軍艦部のダイヤルでは4000分の1秒から1/1秒までしか刻まれていません。ダイヤルでは物理的にそれ以上ムリです。
ですが、スペック上は電子シャッターで3万2000分の1秒から30秒、バルブ撮影まで対応しています。
なので、ダイヤルの範囲外は前面か背面のサブダイヤルを使うことで設定します。
シャッター速度を決めるのに2つのダイヤルを使い分けないといけないわけです。
正直、使いやすさだけを考えれば初めから前面、背面1つのダイヤルだけで操作したほうが早いのは間違いないです。
それは富士フイルムだって分かっているはずです。でもそうせずに軍艦部にシャッター速度ダイヤルをつけることにこだわった。僕はそれこそがこのX-T10のコンセプトだと思っています。そしてそのコンセプトに「いいね!」となったわけです。
合理主義な人にはX-T10はおすすめしません。と言ってもオート機能も意外と作り込まれていて「アドバンストSRオート」と名付けられたX-T10のオート機能は、それこそシャッター押すだけでほとんど間違いない写真を撮ってくれます。
フルオートで使いたい人にもオススメできるレベルの機能は持っています。
でも僕はフルオートで使いたい人にはX-T10よりもっとコンパクトで、もっと多機能で、もっと安いカメラがあると思います。
機械をいじって自分なりにいろいろ試してその結果を楽しめる人にX-T10はいい「オモチャ」になると思います。
バイクや車が好きな人なら分かってもらえるかなと思いますが、愛着をもった自分のアイテムには密かに名前をつけたり「相棒」と呼びたくなる心理があるはずです。X-T10はそういう愛着を持てるカメラです。
X-T10の大きな特徴の1つにEVF(電子ファインダー)の搭載がありますが、僕は正直X-T10を選ぶときにこのEVF機能はむしろ邪魔な存在とさえ感じていました。
最初のカメラがデジカメで、液晶で撮ることが当たり前の僕にはわざわざファインダーを覗いて周りの情報をシャットアウトすることはむしろマイナスポイントでしかありませんでした。
そんなムダな機能はなくして少しでもコンパクトになったほうがいいのに、と。
X-T10を選んだのはあくまでX-A1の延長で、フォーカスモード切り替えやリモコン機能など、別にこのカメラでなくても…というか大抵のカメラには普通に搭載されている機能が欲しかっただけなんです。
その上でクラシックカメラ然としているXシリーズと、いわゆる「フジカラー」を出せるカメラが欲しかったからという理由でこのカメラを選んだので、実際に手にしたときもEVFのことなんか全く興味なかったんです。
ただ、せっかくついているし一応使ってみようと覗いたときに「あれ?なんか楽しい」ってちょっとだけ思ったんですよね。
そのときもそんな衝撃的というほどの感動はなかったんですよ。本当に少しだけ「お、なんかこうやって撮ると写真家っぽい(笑)」くらいに思っただけで。
でも次の休日にまた手に取って、なんとなく撮影しようとしたときに、ふとまた覗きたくなったんですよね。それを何度か繰り返しているうちに、あっさりファインダーで撮るスタイルに変わってしまいました。
そしてそれと同時にこのカメラへの愛着が一気にわいたんです。
撮影時以外にもなんか眺めていたくなる、なんかいろいろいじってみたくなる、そんなカメラです。