ゴアテックスちゃんと理解してる? ありがちな間違いをチェック

ゴアテックスって知っているか?
やだな~、いくら私が初心者でもさすがにゴアテックスぐらい知ってますよ。
では聞こう。ゴアテックスとは?
レインウェアのことです!
・・・。
・・・。
・・・他には?
え? いや山用のカッ・・・レインウェアのことをゴアテックスっていうんじゃ・・・。
(まじか・・・)
あの、すみません、ガチで引くのやめてもらえます? 「あ、この人かわいそうな人だ」みたいな感じになるんで・・・。
最初から完璧な答えなど求めてはいなかったが・・・連載10回目ともなればいい加減登山知識をベースにした答えが欲しいんだが・・・。
だから「レインウェア」って言ったじゃん。「カッパ」じゃなくて「レインウェア」って言ったじゃん。最初の頃は「カッパのことレインウェアとかwwwどこの意識高い系だよwwwああ、あれだ、ファッション雑誌読みすぎて知識だけが先行しちゃってるタイプだwww絶対、財布のことウォレットとか言っちゃうタイプだwww」とか思ってた私が、ナチュラルに言っちゃってるんですよ? あー私もいつの間にか”こっち側”の人間になっちゃってたんだなーまいったなー的な。そういうとこですよ?「気付き」あげてこ「気付き」。
いや、言えてなかっただろ。2回目ちょっとカッパって言いかけてたし。ていうかさり気なく登山者をディスるな。
だって、普段なんでも省略したがるくせに、なんでこういう時だけきちんとした名称で言うんですか。絶対「私そういうのちゃんと抑えちゃってるから」アピールでしょ。
わかった、わかったから。これ以上敵を作るな。広告収入が減る。
まずゴアテックスはレインウェアの名前ではない。防水性が求められる条件に応えるために開発された素材の名称だ。
素材・・・?
一口にTシャツと言っても素材は綿だったりポリエステルだったりいろいろあるだろ。その素材のうちの1つと考えればいい。厳密には生地そのものというわけではなく、生地の中に織り込まれているものを指すわけだが…。
ということはレインウェア=ゴアテックスじゃなくて、レインウェアに使われてる素材がゴアテックスということですか?
そういうことだ。防水性が求められる最も身近な登山道具がレインウェアだから、「レインウェア=ゴアテックス」と思い込むのも分からんではないが、レインウェアだけじゃない。登山靴や帽子にもゴアテックスが使われているものはある。
そうか、登山靴は沢を渡ったりするときに防水性が大事になるし、帽子も雨のとき傘代わりになりますね。ところで、お店でゴアテックスを選んでると似たような名前がいくつもあるんですが・・・。
開発したメーカーによってそれぞれ名称が違う。ゴアテックスは「ゴア」社が開発した防水透湿素材だ。
サランラップとクレラップみたいなものですか?
サランラップとクレラップは名前が違うだけだろ、ゴアテックスは…
おい!ちょっと待て!サランラップとクレラップは名前が違うだけじゃないだろ!確かにサランラップはすごいよ…ほんますごい…もはやラップ=サランラップと言っても過言じゃないくらい浸透してる。貴様のように「オレ料理全然しない人だから」とかいう、時代錯誤のおっさんでもラップのこと自然に「サランラップ」って言わせちゃうくらいの圧倒的シェアを持ってるさ。
「貴様」。
だからってクレラップはサランラップの二番煎じだろとかもうね、マジ安直。絶対マジョリティが常に正義って思ってるタイプ。
「マジョリティ」。
いいかよく聞け。まず、クレラップのアドバンテージとして「クレハカット」がある。おっさん、ラップのカット刃って普通どんな形してるよ?
い、一直線…。
そう。しかしクレラップはそれをV字カットにしたんだ。これにより力が一点に集中し、よりスマートにカットできる。次に…
あ、もういいかな。ここレタスクラブじゃないんだよね。
チッ
防水透湿素材はメーカーによって様々なものがあるが、サランラップやクレラップと同様ただ名前が違うだけじゃない。サランラップやクレラップと同様それぞれ特性が違うんだ。防水・透湿という基本的な特性は共通だがな。
いちいち強調しなくていいですよ。どんなのがあるんですか?
モンベルの「ドライテック」、モンベルの「ブリーズドライテック」、モンベルの「ハイドロブリーズ」、モンベルの「スーパーハイドロブリーズ」、モンベルの「スーパーストレッチハイドロ・・・
偏りすぎだよ!
うるさい!「初心者向け登山だからまずはモンベルかな」って軽いノリでセレクトしたら思いのほか種類が豊富だったんだよ!
で、他には?
ミズノの「ベルグテック」、東レの「ブリザテック」、コロンビアの「オムニテック」、ネクステックの「アウトドライ」、パタゴニアの「H2NO」などがある。
何が違うんですか?
ゴアテックスはポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したePTFEフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して作るのに対し、モンベルのドライテックは一般的なポリウレタン防水素材の特長である、防水性を高めると透湿性が低下するという問題を…
あ、そういうのいいんで、一言で言ってもらっていいですか? 今、絶対読者読み飛ばしたんで。30字で述べよ。
ゴアテックス最強、でも高い。他はゴアテックスの2割減の性能、でも半額。
大丈夫ですか?そんな言い切っちゃって…。
お前が30字縛りにしたからだろうが! 知らんぞ、絶対叩く奴わいてくるからな。
カッパのことレインウェアって言っちゃうタイプの人ですね。
だからリアル登山者をディスるなってば…。

ゴアテックスとは

ではまず、本家のゴアテックスから説明していこう。先程から言っている通り、ゴアテックスの最も大きな特徴は「防水性」と「透湿性」を併せ持つということだ。
今じゃ当たり前になってますが、よく考えるとこの2つを併せ持つって凄いことですよね。
防水性は水を通さない性質、透湿性は水を通す性質、言ってみれば真逆だからな。普通に考えるとありえないことだ。
最初にそれを開発しようと思ったのが凄いですね。ある日、突然偉い人から「水を通さないけど、水を通す素材作れ」って言われても、ただの嫌がらせにしか思えないですよ。あれ、一休さんの世界来ちゃった?みたいな。
防水性だけなら簡単なんだ。全部ゴムにしてしまえば水は通さない。
普通のカッパなんかそうですよね。裏地が総ゴムになってますね。
そう。日常生活用途ならそれでも大きな問題にはならない。でも登山はそうはいかない。常に体を動かしているから汗をかく。防水だけだと内側に汗の蒸気がこもって、逃げ場がない。
サウナスーツみたいになってしまいますね。
汗による蒸れは身体を冷やし、体力を奪う。登山においては命取りだ。だからその湿気を逃すために「透湿性」が必要になる。
どうやって実現できたんですか?
世の中のあらゆる物質は目に見えないくらい小さい粒子の集まりでできていることは知っているな?
中学校で習った原子とか分子とかいうやつですか?
まぁそんなところだ。汗から出る水蒸気、雨や川の水、どっちも同じ「水」だが、実は粒子の大きさが違う。
え、そうなんですか?
水より水蒸気のほうが粒子が小さいんだ。ゴアテックスの表面には網目のように無数の細かい穴が開いているんだが、この穴の大きさが「水の粒子より小さく、水蒸気の粒子より大きく」作ってある。
なるほど! ザルなんかでふるいにかけたときに大きいのだけ残るあの感じですね。 それで水蒸気だけを通して、水は通さないことができる、と…あれ?でもそれだと外からの水蒸気は通しちゃうんじゃ…?
そう。そこが誤解されやすいところなんだが、水蒸気であれば外側も内側も関係なく通すということになる。
ダメじゃん。
そこでダメと思うのは早計だ。水蒸気が内側から外側に、外側から内側に移動するにはある条件がある。わかるか?
誠に申し訳ございませんが分かりかねます。
なんだろう。なんか無性にムカつくんだが…さっき原子とか分子を中学で習ったって言ってただろ。あのあたりで習ってるはずなんだが…。
えー・・・高いところから低いところに流れるとか・・・???
それは気圧の話だろ…いや、でも当たらずと言えども遠からずだな。正解は温度と湿度だ。水蒸気は暖かく湿ったところから、冷たく乾いたところへ移動する性質がある。
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…全くピンと来てないようだな…。登山中の状況をイメージして「外側」と「内側」がそれぞれどんな状態か考えてみろ。
・・・? あ、そうか! 服の内側は体温で外よりも温かく、汗の水蒸気で外よりも湿っている!
そのとおり。だから自然と内側から外側には放出されるが、逆は起こりにくいということになるんだ。
はぁ~よくできてるなぁ~。
もちろんそれ以上に外の温度と湿度が高ければ逆流するわけだが、そんな状況、アマゾンの熱帯雨林でも行かない限り起こらないと言える。仮に熱帯雨林に行くならそもそもそんなところでレインウェアなんて着ないしな。
なるほど…そうですよね。
そしてゴアテックスの特徴として「防風性」もある。登山では風に吹きさらされることも体力の低下につながる。ゴアテックスはそれもサポートしてくれるんだ。
すごいなぁ…え?でも水蒸気は通すんでしょ?だったら空気は当然通すような気がするんですが…。
鋭いな。そのとおりだ。空気は通す。
空気は通すのに防風??
風というのは空気の固まりが強く当たることで感じるものだ。ゴアテックス素材に当たると、風の固まりが分散され、勢いが弱まる。つまり、空気としては身体にあたっているんだが、風と認識するほどの勢いがないから風に吹き付けられてる感触はないということだ。
あー、そういうことか。
以上がゴアテックスの機能の説明だ。
じゃあ、次は他の防水透湿素材を…。
まだだ。ゴアテックスのブランドが表すものは機能だけじゃない。
え、どういうことですか?
どんな機能でもそれが実際の現場で能力を100%発揮できなければ机上の空論で終わってしまう。ゴアテックスには「ブランドプロミス」という理念がある。要は品質保証だ。
確かにゴアテックスのロゴに「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY」って書いてありますね。
この品質を保証するためにゴアテックスのロゴを冠する製品には商品化の前にゴアテックス側のチェックが入る。
へえ、どんな?
まず、ゴアテックスとは生地の間に織り込まれる素材のことだというのは既に言ったとおりだ。つまり、ゴアテックス素材単品で製品になることはなく、必ず何らかの生地で挟みこまれることになる。この生地が透湿性を備えていなければゴアテックス製品としては認められない。
そうか、いくら素材が透湿性を持っていても、その外側の生地が持っていなかったら意味ないですよね。
あとは防水性。生地自体はもちろん、濡らさないことが目的なので、フードがないウェアはNGだ。
なるほど、フードがないと防水性以前の問題ですもんね。
あとは衣類である以上、必ず縫製が必要になる。縫製は水を浸入させる大きな要素だ。縫製部分に熱圧着でシームテープを施すなど、防水対策がなされていなければ、これもNGとなる。
厳しいですね~。でもそこまでしっかりチェックされているなら安心して使えますね。
信頼性は確かなものだが、勘違いしてはいけないのはゴアテックスの性能は永久ではないということだ。
え、どういうことですか?
ゴアテックスの性能は正しい使い方の元で初めて発揮される。
間違った使い方なんてあるんですか?
一番多い間違いが「洗濯をしないこと」だ。
え? そりゃそうですよ? だって洗濯するってことは、ずっと水に浸けっぱなしってことじゃないですか。防水性とかダメになっちゃいそう。
それが大きな間違いだ。もちろんその影響による性能低下はゼロではない。しかし、それより遥かに大きなデメリットがある。人が着用する以上、着用後は表面に「皮脂」が付く。外側には登山中の汚れも付くだろう。既に説明した通り、ゴアテックスは無数の細かい穴でその機能を実現している。皮脂や汚れはこの穴の目を詰まらせてしまうんだ。
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