トレッキングポール使ったら負けなんですか?

登山してるとときどき、杖をついて登っている人がいますけど、あれって必要なんですか?
トレッキングポールだな。
必須というわけではないが、あると便利だぞ。
でもこれを使ってるといつまでたっても足腰が鍛えられないような気がするんですよね…道具なしじゃダメみたいなのってカッコ悪いような…。
そんなことはない。
むしろ登山に慣れたバリバリな人の方が使っている率は高いくらいだ。
マイナスのイメージどころか「デキる」イメージのほうが登山者の中では多分メジャーだぞ。
そうなんですか?
かと言って、初心者が使うにはまだ早い、なんてこともない。
初心者にこそ、力強いサポートになる。
だから誰が使ってもおかしくないアイテムだ。
トレッキングポールを使うメリットの1つに推進力が得られる、という点がある。
ボートでオールを漕ぐ感じを思い浮かべるとイメージしやすいかもしれないが、トレッキングポールを使うことで体を前に押し出す効果が得られる。
普通に歩いているだけでも勝手に体が前に押し出されるような感覚を覚えるはずだ。
特に2本使うとこの効果を実感しやすい。
足だけにかかっていた負担がうまく分散し、歩くリズムが作りやすく、それがさらなる疲労の軽減につながる。
実際に使ってみると、ただ、体重を支えるためだけの道具じゃないことが分かるはずだ。
それに、鍛えたいから使わないというのも少々モチベーションの方向がズレているように思う。
いくら鍛えたくても、ムリをして足を傷めてしまっては鍛える以前の問題だからな。
足やヒザを傷めたら一生付き合っていかないといけないこともあるわけだから、ムリをすることだけが能力アップにつながるわけじゃないことを覚えておいてほしい。

まぁ、この初心者コメントは登山を始めたときの僕の言葉をそのまま写したものなんですが、とりあえずトレッキングポールを使ったからって鍛えられないことはなかったです。
確かに足はラクになりましたが、それは適性な負荷になっただけで、それ以上の負荷はあまり鍛えるのに貢献していたとは思えないところがあります。もちろんゼロではないんでしょうが、効率がいいとは思えないです。
あと、足から取った負荷はなくなるわけじゃなく、上半身に来ます。
そりゃそうですよね。トレッキングポールは上半身で使うんですから。
結果的に胸筋と二の腕の筋肉が少し強くなりました。
足だけに過剰にかかっていた負荷を全身にバランスよく分散させたイメージなので、むしろ鍛えたい人こそトレッキングポールをおすすめしたいくらいですよ。

じゃあ、使ってみようかな。
これもザックとか登山靴みたいにいろいろタイプがあるんですか?
選ぶポイントとしては、「グリップ形状」「材質」「本数」「収納方式」「ロック方式」あたりだな。

T字かI字か

まず使い勝手に一番影響するのはグリップの形だ。
T字型とI字型がある。
それぞれどんな特徴があるんですか?
T字型は下りで力を発揮する。
特に段差が大きいときなど、T字型だと体重をかけやすい。I字型は構造上、横から握るから下りのときはどうしても力がかけにくくなる。
イメージシてみるとわかりやすいが、下りの段差が大きく、トレッキングポールの上が自分の膝ぐらいまでしかない状態だとする。そこから下に降りようとするとき横をにぎることはほとんど不可能ななはずだ。
T字型なら手のひらで真上から体重をかけられる。
I字型は?
I字型は逆に登りで有利だ。
また、スリムなので、収納時にもスペースを取らない。
これは好みで選んでいいんですか?
そうだな。
どっちもタイプで値段に差があるわけじゃない。
登りで使うか下りで使うか、自分の使いたい場面をイメージして選ぶといいだろう。
ただ、シェア的にはI字型が大半を占める。
ざっくりとしたイメージだが、おそらく8割ぐらいがI字型じゃないかな。
I字型と言っても、グリップの上端はコブのようになっていて、T字型の特徴を取り入れたものも多いからな。

個人的にはT字型をずっと使っています。周りはみんなI字型ですが…。
僕はヒザが人一倍弱いようで、下りの時間は登り以上かかるほどです。
パーティーで登山しても下山時に離されることが多いですね。
2年たった今でも下山後はヒザの力を使い切った感があります。
このまま歳を重ねていくとヒザを傷めて登山禁止になりかねないので、下りは意識してトレッキングポールを使うようにしています。
効果は抜群ですよ。

アルミかカーボンか

次は材質ですか?
材質は主に「アルミ」か「カーボン」の2つに分かれる。
アルミのメリットとしては安くて丈夫なことだ。
カーボンはとにかく軽い。山で軽いことは正義だ。
どっちを選べばいいのか迷いますね。
最初はアルミがいいだろう。
カーボンは価格が高い。そして、無茶な使い方をすると割りと簡単に折れる。
アルミだと曲がる程度で済む場合でも、カーボンは曲がることがなく、いきなり割れるように折れる。
正しく使えるようになるまではアルミで充分だ。
アルミだってそんなに重いわけじゃないしな。

2本か1本か

あとは本数?複数使うことなんてあるんですか?
普通の杖は1本で使うのが普通だが、登山ではむしろ2本使いが一般的だ。
先ほど軽く触れたが、2本使うことで左右のバランスが取りやすくなる。
また、歩くリズムも保ちやすくなり、結果的に疲労軽減につながる。
ただ、1本派というのもある。
T字型のストックを好む人は1本で使うことが多い傾向があるようだ。

伸縮式か折りたたみ式か

使わないときの収納方法にもタイプがあるんですね。
これは自分がどういうふうに収納するかを考えるといいかもしれない。
伸縮式は太さが変わらないメリットがあるが、長さには限界がある。
一方、折りたたみ式は伸縮式よりも長さを抑えられる反面、太さが出る。棒が3本並ぶようなものだからな。
ザックにしまうなら短くなる折りたたみのほう、ザックの外のポケットにさすなら伸縮式のほうがいいかもな。
あと、折りたたみ式は比較的高価なモデルに採用されることが多いように思う。
最初に買うものは必然的に伸縮式になるかもしれない。

スクリューロック、レバーロック、ピンロック

次はロックの方式だ。
スクリューロックはネジのように回すことで締めつけるようにロックする。昔からある定番のロック方式だ。
長さを自由に調整できることが最大のメリットだ。
ロックする力は一番強いとされるが、長時間使っていると徐々に緩むことがあるので、ときどきチェックしないと危険なことになる恐れもある。
レバーロックは操作が簡単で、グローブをしたままでもできるのがいい。最近のモデルはこのレバーロックタイプが多い。
ただ、構造上、木や草などに引っかかりやすいデメリットがある。
ピンロックは先の2つのタイプに比べるとあまり見ることがないが、最も軽量化できるロック方式だ。ただ、強度は少々劣る。
うーん、最初はスクリューロックが良さそうかなー。

プラスアルファ機能と部品のサポート

タイプとしては以上の点になるが、それ以外に付加価値も気をつけておきたいポイントだ。
付加価値?
「アンチショック」といってサスペンションのように中にバネが仕込まれているモデルがある。
これは快適さに結構大きな差が出るので、できればこの機能があるモデルから選びたいところだ。
安価なモデルでもわりとあるぞ。
下りのような体重を大きくかけるような場面では特に効果がありそうですね。
あと意外と見落としがちだが、部品の手に入りやすさも重要だ。
トレッキングポールは基本的に先端にキャップをつけて使用する。また、地面が柔らかいときはバスケットと言われる荷重を分散させるパーツを使う。
これらのパーツは基本的に消耗品だ。
摩耗したり破損したときには交換する必要がある。
このパーツはメーカーによって規格が異なるのが基本だ。
部品はどこでも手に入るのか、価格はどれぐらいなのかをあらかじめ確認した上で選ぼう。
全然考えてなかった…。規格統一すればいいのに…。

トレッキングポールの使い方

ここまでで、選ぶポイントは大体説明できた。
あとは使い方だな。
要するに杖でしょ?
「使い方」なんて構えなくても誰でも使えるような…。
もちろん誰でもそれなりには使えるが、より疲れにくい使い方というのがあるんだ。
まず、トレッキングポールの長さ、これは地面に着いた状態でヒジが直角になる長さが適性だ。
登りと下りではポールを着く地面の高さが変わるから、それに応じて長さも調整する必要がある。
登りはポールが足よりも高い位置にあるから、その分短く。下りは足より低い位置にあるからその分長く、といった具合だ。
実際に歩きながらポールを使うときは足が着くよりも少し早くポールをつくことで足にかかる負担を軽減できる。
なるほど。
あとはポールの握る位置。
登りはグリップより少し下を握るように、逆に下りでは上のほうを手のひらでつかむようにするとうまく負荷を分散できる。
グリップについているストラップはどうやって使うんですか?
まず、手首まで通してそれからグリップを握るようにすることで、うっかり手を滑らせて谷底に落とすようなリスクを減らせる。
ただ、アップダウンが続くような場所ではかえって使いにくくなることもあるから、そのあたりは臨機応変に。
使ったあとはそのままで大丈夫ですか?
伸縮式の場合はしっかり乾燥させることが大事だ。
雨が降ってなくても沢を渡ったりするなど濡れる場面は意外と多い。
濡れたまま収納するとサビてスムーズに引き出せなくなることもあるので注意だ。
また、濡れ以外に泥などの汚れもきちんと掃除すること。
ちなみにサビ防止のメンテナンスとしてオイルを塗るのは厳禁だ。
ロックが効かなくなり、最悪使い物にならなくなる。
うーんなるほど。

トレッキングポール以外の使い方

トレッキングポールは杖としての用途だけじゃなく、エマージェンシーの道具としても使えるんだ。
どういうことですか?
まず、ツェルトの支柱として使うことができる。
もともとツェルトはコンパクト化が第一ということもあり、それを前提に作られている面もある。
木があればそこにロープを張ることで同じことができるが、寝るのに適した地面とちょうどいい2本の木なんていう条件はそんなにどこにでもあるものでもない。
柱がないとくるまって使うしかないからな。空間が作れるというのは精神的な安心感がかなり違う。
そういえば両側にトレッキングポールを立ててテントみたいにしているのを見たことがありますね。
あとは動けなくなった人を背負うのにも便利だ。
単純なおんぶは体力がかなり必要だが、トレッキングポールをザックの下に横に通すことで背負子のように使うことができる。
また、筒状の布に2本通すことでタンカ代わりにもなるし、骨折したときの添え木代わりにもなる。
そういった非常時のアイテムとして持つだけでも価値はあるアイテムと言えるだろう。
いろんな使い方ができるんですね。
トレッキングポールのメーカーは「レキ」「ブラックダイアモンド」が定番だが、数万円するものがほとんどだ。
価格的に厳しければ1000円~3000円ぐらいの安いものでも充分トレッキングポールとしての役割は果たせるから、まずはそのあたりを使ってみて本当に必要かどうか判断するのもいいかもな。
わかりました!
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公開日:2017.2.16
更新日:
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