十徳ナイフのビクトリノックスか、ナイフ一本のオピネルか

アウトドア始めて5年ぐらいたちますが、これまでいろんな道具を買ってきました。

登山に50万円、キャンプに50万円でトータル100万円ぐらい使ったことになりますが、最初に買って今も使い続けてる道具って意外とないです。

登山靴ナイフぐらいですかね。

最近は登山よりキャンプの頻度が多いので、登山靴を使うことも少なくなりましたが、ナイフは登山でもキャンプでも常に使うので、使用頻度も変わらず使い続けてるのはナイフぐらいです。

ナイフはビクトリノックス

十徳ナイフの代名詞です。

「十徳ナイフを頭に思い浮かべて下さい」って言われたら赤い本体のナイフを思い浮かべませんか?

それがビクトリノックスです。

スイスのメーカーで100年以上の歴史があり、今なお十徳ナイフのトップブランドです。

ビクトリノックスのバリエーション

一口にビクトリノックスと言っても、種類はいろいろあります。

まず、品質は基本的に同じです。

例えば、全モデルが装備している「ラージブレード」。

いわゆるナイフですが、これのナイフとしての品質は一番安いものから一番高価なものまで全て同じです。

じゃあ、何が違うのかと言うと、十徳の「徳」の数が違います。

つまり価格の差は機能数の差です。

全部挙げると数十種類にもなりますが、一般的なアウトドアで実用性と価格のバランスが良いものに限定すれば4種類に絞り込めます。

Amazonなど見ればわかりますが、実際、売れてるのもこの4種類です。

表にすると↓のような感じです。
(スマホは横にスクロールできます)

必要度 名称 キャンパー スーパーティンカー ハントマン スイスチャンプ
1 ラージブレード
2 はさみ
3 カン切り
4 せん抜き
5 のこぎり
6 ピンセット
7 プラスドライバー
8 マイナスドライバー 3mm
9 プライヤー
10 スケール(cm)
11 金属やすり
12 スモールブレード
13 マイナスドライバー 6mm
14 マイナスドライバー(小)
15 マイナスドライバー 2.5mm
16 つまようじ
16 メタルソー
17 つめやすり
18 コルクせん抜き
19 千枚通し
20 ピン
21 ワイヤーストリッパー
22 ワイヤーカッター
22 マルチフック
23 はり外し
24 つめそうじ
25 のみ 4mm
26 うろこ落とし
27 スケール(inch)
28 加圧ボールペン
29 ルーペ
30 端子つぶしツール

「必要度」は僕が勝手にランク付けしたものです。

5年間使ってきて実際必要になった頻度を元にしました。

ツッコミどころの多い「全部入り」モデル

まず、全部入りの「スイスチャンプ」

未知の災害に備えたりなど、使う場面がはっきり決まっていなかったり、必要な機能を取捨選択するのが面倒、だからとりあえず全部欲しいという人におすすめです。

ただ、実際その機能必要かと言われるとかなり微妙なものがたくさん含まれます。

上の表の「必要度」の下位を見てもらえればわかりますが、たとえば「端子つぶしツール」ってなんやねんって話でしょ。

あと「マルチフック」とかマルチっていうほどなんでも引っ掛けられるようなサイズじゃないし。

ただこれはプルトップ式の缶詰を開けるのに結構使えるので良しとします。

開けにくい缶詰って力を入れすぎて手を切りそうになることあるんですが、そのときに使えるんですよね。

あと、ツッコミどころとして同じような機能がかぶってるというのがあります。

たとえば「つまようじ」「ピン」「つめそうじ」「千枚通し」ってどれか1つで良くないですか?

マイナスドライバー「小」と「2.5mm」もどっちかでよくないですか?

「金属やすり」と「つめやすり」もどっちかでよくないですか?

みたいな感じで。

個人的にはスイスチャンプは、やけくそ気味のギャグツールに感じるレベルなので、選択肢としてナシです。

そして、機能が多いと取り出すときに迷いやすいというデメリットがあります。

僕はスーパーティンカーを使ってるので、スイスチャンプの半分の機能数ですが、それでもいまだに取り出すときに間違えることがあります。

缶切りと栓抜きなど、形が似てるので、取り出したあとも「あれ、どっちだったっけ」ってなることがありますね…。

現実的には3モデルが候補

ということで、キャンパー、スーパーティンカー、ハントマンから選びます。

この3つの選択はなかなか難しいです。

なぜなら、松・竹・梅のように単純に上下を決められる構成になっておらず、それぞれ一長一短な感じだからです。

具体的な違いは

「はさみ」

「のこぎり」

「プラスドライバー」

「コルク栓抜き」

の有無です。

厳密には「マルチフック」の有無もありますが、これは正直あってもなくても大して困らないので迷う理由にはならないと断定します。

以上の部分だけ抜粋して改めて表にしてみましょう。

必要度 名称 キャンパー スーパーティンカー ハントマン スイスチャンプ
2 はさみ
5 のこぎり
7 プラスドライバー
18 コルクせん抜き

はさみはスーパーティンカーとハントマンにはついてますが、キャンパーにはついていません。

のこぎりはキャンパーとハントマンにあり、スーパーティンカーにはついていません。

プラスドライバーはスーパーティンカーについていて、キャンパーとハントマンについていません。

どれも備えたのとなるとスイスチャンプしかないのです。

千枚通しとかスモールブレードとか、なくても良さそうな機能を必須にして、わりと使用頻度多そうなこれらの機能を限定的にした意図がよくわかりませんが、残念ながらそういう仕様なのです。

この中で、個人的に絶対おすすめな機能が「ハサミ」です。

パウチの袋に切り口がないときにちょっと切ったり、

ナイロンの結束バンドを切ったり、

ほつれたロープの先端を切ったり

など、活躍の場がかなり多いです。

そんなの全部ブレード(ナイフ)で行けるやん」という声が聞こえてきそうですが、それは違うと声を大にして言いたいです。

ナイフでできないことはないんですけど、危ないんですよ。

例えば結束バンドって固めの樹脂でできてて、ナイフで切るには結構な力が必要です。

ナイフは切ったあと、そのまま振り切る形になるので、その先に何かあると勢い余って傷つける恐れがあります。

パウチも同様で、グニャグニャしたものを切るにはもう一方の手で抑えることになりますが、この手をちょっとした扱いミスで切ってしまいそうになります。

ハサミならそういった危険性が限りなく低く、安心して使えます。

そうなるとハサミが使えない「キャンパー」は候補から外れることになりますが、キャンパーのメリットはのこぎりが付いていることです。

ハサミを取るか、ノコギリを取るか、ここが悩みどころです。

個人的には、のこぎりは使用頻度としては多いんですが、刃渡り10cmもないビクトリノックスのノコギリが果たして実用に耐えるのかというとかなり微妙と言わざるを得ません。

現実的に切れるサイズは、直径2~3cmの木材ぐらいが限界だと思います。

そんな細いの切って何に使うのっていう。

むしろスイスチャンプにしかないメタルソー(金切りノコ)が欲しかった。

金属は細いものを切るケースが多いので、この小ささでも充分実用に耐えるんですけどね。
金切りノコは代替がきかないし、いざ必要になったときに手元にないことが多い道具なので十徳ナイフに入ってると便利です。

ということで、ノコギリよりもハサミが個人的にはおすすめです。

どちらも欲しいなら「ハントマン」が良いです。

ただ、ハントマンはプラスドライバーが使えません。

どんだけ一長一短にするねんって話ですが、まぁ結局「一番高いの買ってね」ってことなんでしょうか。

プラスドライバーは登山ではまず使いませんが、キャンプでは結構使います。

コンロとかランタンとか登山よりもメカニカルな要素が多いからですね。

個人的な用途で言えば、キャンプだとラジコン持ってったり、DIYやったりするので、そのときもプラスドライバーは活躍します。

ドライバーはグリップこそありませんが、先端は本来のプラスドライバーと同じなので、実用度でいうとこちらが上かなと。

のこぎりは多分単体で別に持ってた方がいいです。

折りたたみの小さなものもあるし、ワイヤー式ののこぎりもあるので、そんなにかさばるものでもありません。

ということで、ハサミは前提として、プラスドライバーのスーパーティンカーか、ノコギリのハントマンかで選ぶことになるのかなと。

僕はプラスドライバーの方が使えそうだったので、スーパーティンカーを選びました。

コルク栓抜きがないというデメリットがありますが、僕はワインを飲まないので必要ありません。

オピネルはダメなの?

ナイフを買おうと思ったときに真っ先に考えるのが十徳ではない、単品ナイフの存在。

オピネルやモーラナイフが定番です。

登山を始めたときにナイフが必要だと言われ、買おうとしたのがオピネル。

折りたたみなのはビクトリノックスと同じですが、機能はナイフのみなので用途は限られます。

でも実用性うんぬんじゃなくて、とにかく見た目がカッコよかった。

男ならナイフに憧れるときが人生で一度はあると思いますが、実用重視の十徳ナイフよりギラリと光る一本のナイフの方がかっこよく見えますよね。

で、オピネルを買おうとお店でショーケースを見てると、横で店員さんが他のお客さんの接客をしてたんです。

どうやらそのお客さんも同じくナイフを求めてやってきたようで、オピネルに心惹かれてる様子。

するとその店員さん、

「ナイフは十徳ナイフがいいですよ。

いや、男って大体オピネルとかゴツいサバイバルナイフとかを欲しがるんですよ。

やっぱナイフって男のロマンですもんね。

でも、ナイフ単品って意外と使えるシーンが限られるんですよ。

缶詰食べたいと思ってもナイフで缶開けるの大変ですよね

旅先で地ビールを見つけた。飲みたい。でも、そういうのってだいたい缶じゃなくて瓶ですよ。

ナイフで栓開けるの大変ですよね

ナイフが役立つのって「切る」ときだけです。

じゃあ切るシーンは100%活躍できるかっていうとそうでもないんですよ。

例えばロープの端っこを少し切りたいとき。

ロープのような細いものをナイフで切るときって切りたい部分を刃に当てて、その両側を引っ張ることで切ることになるんですが、端っこだとそれができないんですよね。

そういうときはハサミのほうが都合がいいんですよ。

十徳ナイフなら、缶切りも栓抜きもハサミも全部入ってます。」

そして、そのお客さんはビクトリノックスを買っていきました(笑)

家電みたいにインセンティブもらってるわけでもないだろうに、これだけ偏った接客をするショップ店員も珍しいですが、僕もその時点で、完全にビクトリノックスに心変わりしてしまってました。

見た目は確かにナイフ一本がカッコいいです。

結局ビクトリノックス買ったあと、サバイバルナイフへのロマンを捨てきれずにサバイバルナイフも買ったんですが、使ったかと言われると全然使ってないです。

この5年間で3回ぐらいしか使ってないです。

十得ナイフは広く浅く、サバイバルナイフは一点特化なので、ナイフ単体での使い勝手はさすがにサバイバルナイフが有利だろうと思ったんですが、それさえもビクトリノックスのほうが上だったんです。

ナイフは大きいほど便利だと思ってましたが違いました。

小さいと小回りがきくんです。

ナイフで小回りって意味がわからないかもしれませんが、使ってみればわかります。

アウトドアでしかも一人だと必要な食材の量ってほんとに少量ですよね。

その場合、ナイフは小さいほうが作業がサクサク進みます。

大きい包丁でもできないことはないんですが、ムダに大きいと、持ったり置いたりするだけでもいちいち野暮ったい感じがします。

アウトドアは持ち物を必要最低限に抑えるのが基本なので、料理スペースも限られることが多いです。

30cmぐらいしかないテーブルで包丁のように大きいナイフは置き場所を探すだけでもたつきます。

あと、切るときに必要な力。

刃の切れ味は言わずもがなですが、大きくなるほど必要な力も大きくなります。

薪割りなど「大きな力で大きく切る」ことが必要なときには便利なんですが、一人分の食事の調理に必要な力はとても小さいです。

ムダに力が必要でムダに力が逃げていくので使っていると疲れます。

大きなナイフを小さな力で動かすのはそれはそれでテクニックが必要でムダに疲れます。

大は小を兼ねません。

ということで、単品ナイフはとても魅力的なんですが、活躍の場が多いのはやはり十徳ナイフなんです。

厚みに注意

買う前の注意点として、厚みを見落としがちというのがあります。

機能が増えるほど厚みが増すということを念頭に置いておかないと、届いたときに「!?」となります。

当たり前のようですが、ネットで買う場合、商品写真を見て買うことになります。

この商品写真が、基本的に正面から見た写真なので、厚みを認識しにくいのです。

ナイフをしまうときに注意

ビクトリノックスの問題点として、ナイフの上下が分かりにくいというのがあります。

たたむときにナイフの背中を押して戻しますが、上下が認識しにくいため、間違って刃の方を押そうとしてしまうのです。

勢いよく押し込もうとしたらそのまま指がザックリです。

これ、何度もヒヤッとしたので、割りと真面目に直したほうがいいと思うんですが、構造上直せないんですかね?

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公開日:2021.4.22
更新日:
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